児童虐待とは

児童虐待

親などの保護者や、その同居人などが児童に虐待を加えること。暴力などによる身体的な虐待、食事を与えないなどのネグレクト、性的な虐待、言葉や態度による心理的な虐待など、児童の身体・精神に危害を加えたり、適切な保護・養育を行わないこと。

定義
身体的虐待 児童の身体に外傷が生じ、又は生じる恐れのある暴行を加えること。 たたく、ける、つねる、なぐる、激しく揺さぶる振り回す、噛む、しばる、水につける、火を押しつける、首を絞めるなど。
性的虐待 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。 性的暴行、性関係の強要。ポルノの被写体など。
ネグレクト
(養育の拒否や放棄)
児童の心理の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置。保護者以外の同居人によるあらゆる虐待行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。 食べ物やミルクを与えない、衣服をかえない、学校に行かせない、危険な場所に放っておく、医者に見せない、家に閉じ込めるなど、愛人などの子への暴力を見過ごしにするなど。
心理的虐待 児童に対する著しい暴言または著しく拒絶的な反応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。 子供の存在を無視する、おびえさせる、暴言をあびせる、ひどい言葉でなじる、無理じいするなど。子供のいるところて繰り返されるドメスティック・バイオレンスも。

状況

2008年度の児童虐待相談件数は日本国内で40,639件で、統計開始の2002年と比較すると40倍の数字に増加している。
アメリカの被虐待児童数は約88万人(2000年)、ドイツ31,000人、フランス18,000人と報告されている。

現在良く知られている要因

  • 望まない出産や望まれない子供への苛立ち
  • 配偶者の出産や子育てへの不協力や無理解に対する怒り
  • 育児に対するストレス
  • 再婚者の連れ子に対する嫉妬や憎悪
  • 離婚後、新たに生計を共にする者(再婚者や「内縁の夫・妻」)との生活の優先

などが挙げられるが、これらがなくても児童虐待が起こりうることも明記しなければならない。

対策と課題

こうした子供の救済、保護を担当するのは、児童相談所であるが、特に緊急を要する場合は、警察がまず加害者である側から児童を引き離して保護し、しかる後に児童相談所に事態の収拾を預ける事もある。しかし令状なしに強制処分を行う権限を警察に与えることは危険すぎる為、現実的ではない。行政警察活動の一環として警察が動くことは可能であるが、相手方親権者の同意を得ることができなければ警察もそれ以上手を出せないため、実際にはさほど行われていない。児童相談所ではそれぞれのケースを調査し、親に対するアドバイスや援助を行ったり、児童に必要な医療措置を手配したり、必要な場合には、親権を剥奪したり児童養護施設に児童を収容したりすることもある。

また、いずれも家庭内や施設内などの閉鎖環境において行われている事もあり、大部分が暗数となっている。児童を保護する児童相談所にしても、事実関係の調査中に親権を盾に両親が保護した児童を連れ去ったり、醜聞を恐れて引越しをしてしまう、児童が親を庇おうとして被害を訴えたがらない、両親の親が介入して児童を親元に戻してしまう等の問題もあって、手遅れになることもある。

躾と体罰においては、現代でこそ度を越した体罰はトラウマの要因として批判されているが、近年まではあらゆる肉体的な苦痛を与え得る体罰が有効な教育方針として考えられていたし、特に躾の名の下に単なる暴行を行う保護者が、事態を悪化させる要因になっている。なお1980年代のアメリカでは菓子の包装紙にすら「ストップ・ザ・チャイルド・アビュース」という標語が記されていた。児童虐待問題の社会的取り組みが行われているアメリカでは、「子供は社会で育てるもの」という意識のもと、警察・病院・民間団体など、社会全体で問題の解決に取り組んでいるのに対し、日本では「子供は親が育てるもの」という意識が根強いため、問題が進行し、発覚した時には重大な事態に陥っている場合がかなりある。また都会はもとより、地方都市ですら地域全体で子育てを支えるという意識が希薄なため、虐待問題の負担が行政、特に児童相談所に集中するという問題も見られる中2000年11月に「児童虐待の防止等に関する法律」が制定され、『児童相談所運営指針』『子ども虐待対応手引き』も合わせて発出された。

また2003年には増加する児童虐待に的確に対処すべく、従来は育児全般に関する相談を受け付けていた児童相談所を「児童虐待と非行問題を中心に対応する機関」として位置づけた。

2004年の「児童福祉法」の改正では児童相談に関する体制の充実や要保護児童に関する司法関与の強化が図られ、また2007年「児童虐待の防止等に関する法律」の改正では裁判所の許可状による家庭への強制立ち入り制度も新設された。

しかしながら全国児童相談所長会の調査によると全国の児童相談所2008年4月〜6月に対応した児童虐待事案で、子供と接触できなかったために児童相談所が一時保護しなかったケースが133件あったことが分かった。うち7件は生命の危険を伴うなど深刻なケースだった。法改正で児相は強制立ち入り調査(臨検)ができるようになったが、入り口で足踏みし救出に進めない現状が浮き彫りになっている。

1990年に1,011件だった子ども虐待の相談件数が2009年の速報値では42,000件に達している。 しかもこの数字でさえあくまで児童相談所で相談を受けた認知件数であり、病院や保健所などの専門機関で相談をしていながらも児童相談所に通報されていないケースや専門機関に発見されず潜在しているケースもさらに多いと考えられる。

子ども虐待は、子どもの心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与える子どもに対するもっとも重大な権利侵害であり、子ども虐待問題へはあきらめず、ねばりづよく、しかも適切な対応が求められる。

子ども虐待への対応の難しさのひとつには、虐待をする家族は「多問題家族」と言われるように複数の問題を抱えているケースが多い事にあり、多くの分野の専門家がチームの連携を図る事が求められている。その他の問題として、子どもを虐待する親の心の問題の深さが挙げられる。子どもを虐待する人は自分自身が虐待を受けて育ってきた人が少なくなく、虐待は親から子へと伝えられる(世代間伝達)と言われている。自身の養育体験から人への不信感、被害者意識が強いため相談に応じる人との関係も容易には成立しないが、親が虐待をやめ子どもが親になった時に虐待をしないよう虐待の連鎖を断ち切るためにも、慎重で粘り強い対応が求められる。

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